前回やった「ローマ数字でコード進行を分析してみる練習」
このローマ数字で書くコードネームを「ディグリーネーム」って言いまして、コード進行の分析をする上で、とても役立ちます。
今回は「ディグリーネーム」にケーデンス(終止形)ラインを引いて、具体的にコード進行を分析する、やり方を解説していきます。
まずは、ダイアトニックコード群のそれぞれの役割(機能和声)を理解しましょう!!
どこかで聞いた事がある「トニック」「サブドミナント」「ドミナント」ってヤツです。
「トニック」「サブドミナント」「ドミナント」機能和声って何?
ダイアトニックコードの番地には、それぞれ役割(キャラ)ってのがありまして、これを機能和声っていいます。
👆これが超基本。メジャーのダイアトニックコードの機能っス。
3つキャラがありまして、ダイアトニック村の1丁目がトニック・4丁目がサブドミナント・5丁目がドミナント。必修なので丸暗記しましょう。
機能和声をキャラ的に例えて言いますと...
トニック「安定した響きの中心人物」
ドミナント「不安定な響きのドラマを作り出す人物」
サブドミナント「ちょっと不安定な、せつない感じの脇役的人物」って感じのキャラクターになります。
このキャラクターを組み合わせて、コードを進行させ物語を作って行くわけですね。
で、残りのⅡ・Ⅲ・Ⅵ・Ⅶにもキャラがありまして、それぞれ本家の音をもったコードでキャラが決定しています。
例えば、Cメジャーのダイアトニックコードで、トニックを見てみると...
👆この本家から見た、同じ遺伝子(同じ音)を持った、親戚的なコードのキャラを代理和音とか代理コードって言います。
👇ドミナントとサブドミナントの代理も混ぜると、この様なキャラ一覧表になります。これも必修暗記事項っス。
ケーデンス(終止)とは?
すべてのコード達はトニックに進行する事で、物語が終わります。
トニックに向かうコード進行を「終止」とか「ケーデンス」っていいまして...
サブドミナント➡トニックで「サブドミナント終止」
ドミナント➡トニックで「ドミナント終止」って形があります。
つまり、不安定な響き(ドミナント)から安定した響き(トニック)って運動を繰り返して、コードは進行し、物語を作ります。
G7(不安定な響きのⅤ7ドミナント)➡CM7(安定した響きのⅠM7トニック)って動いてスッキリ。
腹減った!!(ドミナント)➡ご飯食べた!!(トニック)って食べてスッキリ。
イライラしたので(サブドミナント)➡あいつをバットでぶん殴って(ドミナント)➡警察に自首しました。(トニック)スッキリ。
って感じで、機能和声は文法に似ています。
ケーデンス・ラインを書いてみる。
さっきの例えのように、曲の中には、この「終止形」が何個もあるので、物語が終わるって言うより、
「~でした。」とか「~でございます。」
と言った文法の終わり形。段落のような働きをします。
👆は、Ⅴ7ドミナントからⅠトニックに行く「ドミナント終止」の書き方。弧線を書きます。
で、Ⅴ7ドミナントからⅢm7もしくはⅥm7などの代理トニックに行くケーデンスの書き方は👇。
この代理トニックに進行するコードを「偽終止」って言います。こんな感じで、2本線の弧線を書きます。
弧線を書いて「終止形」を分析していくわけですね。
ケーデンス・ラインは「ドミナント7➡トニック」っていう「ドミナント終止」の時にケーデンス・ラインを書きます。「サブドミナント終止」では書きません。
つまりⅤ7が出てきて、トニックに動いたら書きますし、「セカンダリードミナント」(注・【セカンダリードミナントの「ツー・ファイブ」で楽々アレンジ】を参照してください。)の時も書きます。
セブンスコードに注目って感じですが、終止しないセブンスコードもあるので、ご注意(メロディックマイナーのⅣ7とか)してください。
👇ちなみに、セカンダリードミナントは2次ケーデンスって呼び方もあります。
ツー・ファイブのラインの書き方。
ドミナント終止は、サブドミナント➡ドミナント➡トニックって進行すると、強力に終止します。
👆のようにⅣ➡Ⅴ➡Ⅰって動くのが「サブドミナント➡ドミナント➡トニック」で終止する王道パターン(俗にいうスリーコードとか主要和音ってヤツ)ですが、ベースラインが完全4度で力強く進行する、Ⅱ(代理サブドミナント)➡Ⅴ(ドミナント)➡Ⅰ(トニック)って終止する形が、現代のポピュラー音楽でよく使われます。
これを「ツー・ファイブ」とか「ツー・ファイブ・ワン」って言います。
終止といえば「ツー・ファイブ」ってくらい、よく耳にする重要なコード進行なので、ケーデンス・ラインとセットで、このコード進行にも記号を付けて書きます。👇
ダイアトニックコードのⅡ➡Ⅴの時、以外の「セカンダリー・ドミナント」の時も、他のキーからⅡ➡Ⅴを引っ張り出す事が出来るので、その時も👇の記号を書いて分析します。
以上が基礎的な、ケーデンス・ラインとツー・ファイブ・ラインの書き方になりますが、実は厳密な書き方のルールってのは無くて、時代や流派によって書き方が違う場合があるので、ご了承ください。
大雑把にツー・ファイブと終止がわかる記号を、書けていればOK。
ここまで分析できれば、コードの書き換えが可能になります。
ケーデンス・ラインを書いてコード進行を分析してみよう。
例題として、簡単なコード進行を「ケーデンスライン」を書いて分析してみましょう。
次のコード進行にディグリーネームとケーデンス・ライン。機能和声を書いて分析してください。
問1
問2
問3
問4
問5
答え合わせと、解説。
問1。
左端の調号が、#1つなので、キーはG/Eマイナーって事なんですが、調号がわからない場合は、セブンスコードの次のコードに注目。
4度・5度で進行するGなので、Gメジャーかな?って推測できます。
Gメジャーのダイアトニックコードに沿って、ディグリーネームと機能を書いていきます。
問2
キーは♭2つで、B♭/Gマイナーって推測できます。
Ⅴ7の後に代理トニックのⅢm7が来てるので、偽終止の記号で書きます。
ダイアトニックの序列が理解出来ていれば大丈夫。
問3
#が2つで、D/Bマイナー。F#7は4度先のBmに動いているので、「Bマイナーだ!!」って推測できます。(DメジャーならA7が出現するはず)
マイナーのツー・ファイブのⅡはm7(♭5)です。Ⅶm7(♭5)と間違わないように注意。
マイナーにも機能和声はあります。詳しくは👇で。
メジャーの機能和声は分かりやすく、盤石なんですがマイナーの機能和声は、結構曖昧で理論書みてもあやふやな所が多いっス(SDとDの二重機能だったりとか。)
マイナーの機能和声は考えすぎないようにしましょう。
問4
#・♭なにも付かないので、Cメジャーが想定されます。
手順に従い、全部にディグリーネームを振るとダイアトニック以外のコード(E7・C7・A7)が出て来ます。
こいつの出所は...
E7はAm7をⅠトニックに見立てた「セカンダリードミナント」で、セットで付けれる「ツー・ファイブ」のBm7(♭5)➡E7➡Am
C7はFM7をⅠトニックに見立てた「セカンダリードミナント」で、セットで付けられる「ツー・ファイブ」のGm7➡C7➡FM7
A7はDm7をⅠトニックに見立てた「セカンダリードミナント」で、セットで付けられる「ツー・ファイブ」のEm7(♭5)➡A7➡Dm7
で、最後に通常の「ツー・ファイブ」で1小節目のⅠトニックに解決!!って構造になっています。
問5
コード進行だけみると、A♭メジャーに見えそうですが、4小節目の「B♭m7・E♭7」はA♭M7のセカンダリードミナントで、2小節目のG7がこのキーの本命、Ⅴ7です。
つまり、キーはCマイナー。
問題は6小節目のG7と7小節目のF7の解決先。
G7はⅤ7ですが、行き先が未解決のⅤ7って扱い。
終わらせないで、不安定な感じを引っ張りたい時に出てくるⅤ7。
トニックコードに行かないので、ケーデンス・ラインは書かない。
F7の出処は、メロディックマイナーのダイアトニックⅣ7で、セブンスコードですが、解決しないセブスコード。
Ⅳ7はドミナントの力を持たない、セブンスコードでキャラ的には「サブドミナント」に分類されます。
12小節ブルースのコード進行に出てくる、Ⅳ7(AマイナーのブルースならD7)のコードの感覚でセブンスコードだけどドミナントの解決感の無いインポ(機能不全)なセブンスコードってイメージです。
まとめ
今回は各コードの機能と、「ケーデンス・ライン」と「ツー・ファイブ」のラインの書き方を解説しました。
コード進行に、「ディグリーネームを振ってケーデンス・ラインを書く」
これでコード進行の構造って言うか、コード進行の文法ってのが見えてくると思います。
構造が分かれば、コードを書き換えて自分なりのアレンジが可能になります。
次回は具体的な書き換えのやり方を解説したいと思います。
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