モード音楽と調性音楽は、同じドレミファソラシドって道具を使うんですが、一番の違いって何?って言いますと...
コードが進行する音楽=調性音楽。
コードが進行しない音楽=モード。
例えばスーパーマリオは画面がスクロールして山あり谷あり(コード進行)でマリオ決まった動きをして(マイナーのメロディー・メジャーのメロディー)ゴールします。これが調性音楽。
で、モードは初期マリオブラザーズのように、背景は固定されていて(軸音)その動かない背景の中で、飛んだり跳ねたり(モードスケール)で、自由に動いて、ひたすら敵を倒す。(解決しない音楽)これがモード音楽って感じ。
例えが昭和すぎて、わかりにくいので今回は具体的に、「コードが進行しないとは、どういう事なのか?」って解説をします。
調性でみるダイアトニックコード。モードでみるダイアトニックコード。
ドレミファソラシドを積み上げて作る、7つのコードを「ダイアトニックコード」っていいます。👇

コード進行の基礎っすね。👇
ダイアトニックコードの概要を簡単にまとめると、調性音楽における、「ダイアトニックコード」は、それぞれ背番号(ⅠⅡⅢⅣ~)があって、番号にはそれぞれ役割(トニック・サブドミナント・ドミナント)があります。👇

👆このダイアトニックコード環境の中で、「ドミナント~トニック」って運動(ケーデンス・終止)を繰り返して曲が出来ます。
現在我々が聴いている、ほぼ99%の音楽が、この調性音楽のドミナント~トニック運動で成り立っている!!と言っても過言ではないっス。
つまり、山あり谷あり(ドミナント~トニック)って風景を何回も繰り返し、背景がスクロールして最後に大きなトニックにゴールして、曲が終わる。ってのが調性音楽のコード概念になります。
一方のモード音楽の「ダイアトニックコード」の概念は...👇

👆ⅠⅡⅢⅣ~の序列も、トニック・サブドミナント・ドミナントって役割もなくなります。
そして7つのコードは、軸音(ルート音)から作られる、軸音コードを中心に、特性音のあるコード(プライマルコード)と特性音のないコードに分けられます。

しかし、このまま7つコードを使えば、嫌でもコードが進行しちゃうので、コードを進行させない「仕掛け」が必要になります。👇

コードの最低音部に、軸音(ルート音)を鳴らして置くって「仕掛け」をします。
つまり、ダイアトニックコードに分数コードのCを置く。
最低音部にCを鳴らし続けると、バスケットボールのように「片方の軸足を固定して動けなくなる!」って力が働き、コードが進行しなくなります。
なので、調性音楽のような山あり谷ありのスクロールする背景は、低音の軸音で止められ、スクロールしない背景で、マリオが(メロディーが)とんだり跳ねたり自由に動く事で、調性音楽とは違う、マイルス・デイヴィスのような「クール」なモード音楽なります。
👆チャーチモードの音楽は、淡々とメロディーが奏でられる、「クール」な感じ。
バッハ以降の調性音楽は、起承転結がはっきりした「劇的」な感じ。
以上が「調性音楽」から見たダイアトニックコード。「モード」から見たダイアトニックコードの概念になります。
具体的な楽曲でみる、コード進行しない音楽とは。「SO・WHAT」
概念だけじゃ、わかりにくいので有名な楽曲で解説してみましょう。
ご存知、「モードジャズ」の祖、マイルス・デイヴィスのアルバム「カインド・オブ・ブルー」から「SO・WHAT」。👇

👆この曲はDドリアンを提示している曲。👇まず弾いて味わってみましょう。

👆この様に、Em7/DとDm7を繰り返すんですが、途中でコードが進行したように聴こえる所。(1分04秒辺り)
これは、Dドリアンから軸音が、半音上がってD#(E♭)ドリアンになったってだけで、進行ってんじゃなく、移調って感じ。

この様に、曲の途中で、軸音が変わったりモードが変わる事を、「モーダル・インターチェンジ」って言います。
で、話を戻してDドリアンのダイアトニックコードを見てみましょう。👇

👆ちなみにDドリアンはCイオニアン(旧Cメジャー)と全く同じダイアトニックコード。
👆なので、軸音コードがCM7からDm7に移って、Dドリアンなので低音部にDが配置されるダイアトニックコードって見ることができます。
で、「SO・WHAT」はDドリアンの特性音BがあるEm7/Dと特性音がない軸音コードDm7の2コードで、Dドリアンのサウンドを提示するって構造になってます。
👆前回の「2コードワンモード」形ですね。

ちなみに、Em7/Dって簡単に表記しましたが、ジャズ風にテンションコードで書けばDm9(13)って表記と同じことです。
仮に軸音決めずに、Em7~Dm7の2コード弾くと...

👆やっぱりイマイチ。コード進行感が出ちゃいます。
なので低音で軸音をキープってのが、モードでコードを弾く時のキモになるわけですね。
ちなみにEm7/D以外の「マル特コード(プライマルコード)」で、2コードワンモードを作るのも可能。👇

👆同じドリアンサウンドでも、雰囲気が変わってきます。(ギターだと押さえ方が大変ですが)
傾向としては、軸音コードの隣の「マル特コード」がハマりがイイです。

なので、困った時は、軸音コード両隣の○特コードを使うって覚えると、いい雰囲気の2コードワンモードを作ることができます。
で、このDドリアンの2コードをバックに、マイルスたちがDドリアンを自由に弾く!!って構造になっています。
調性とモードの融合。「タイム・アフター・タイム」
マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」で、提唱されたモードジャズ。
この技法はやがて、ジャズだけじゃなくポプュラーミュージックにも応用されるようになります。
シンディローパーの「タイム・アフター・タイム」。イイ曲ね。
このAメロ部のDm/C~Cを繰り返す部分。

このAメロ以外はキーCメジャーの曲で、ごく一般的なコード進行をする曲。👇
👆調性音楽で、Aメロのコードを分析しようとすると、西尾さんのようにDm/CをFで解釈しようとするんですが、Fだとやっぱり雰囲気が違う気が。
モードの技法で解釈すると、簡単で「Cイオニアン」の2コードワンモードでピッタリ合います。
まずは、3和音のCイオニアンのダイアトニックコードを選択。👇

👆軸音コードCの隣にあるDm/Cを使って、Dm/C~Cの2コードで「Cイオニアンサウンド」を提示。

👆特性音F有りコードのDm/Cと、特性音無し軸音コードのCで、Cイオニアンのサウンドを作ります。

あとは、しれっと調性音楽のCメジャーのコード進行に戻るって構造になっています。
西尾さんのようにF~Cや軸音なしのDm~Cで弾いちゃうと、コード進行感がでちゃうので、やはり低音で軸音C固定のモード技法で弾いた方が、クールな響き。
ちょっとした事ですが、全然ちがう雰囲気になりますね。
この様に、モードはマイルスやコルトレーンのような「ガチモード」から、ポップスやロックにも転用され、我々の気付かない所で、既にモードを聴かされているってのが、現在のポプュラーミュージックである訳っすね。
まとめ
ロックギタリストにとっては、理解しずらいコードを使ったモードの技法。
なんですが、今回はのように、具体的な楽曲を使って解説するとコードを使ったモード技法ってのが、少しはわかるようになったかと思います。
とにかくドミナント~トニックのような「コード進行」「ケーデンス」を避けるのが「モード技法」の要なんですが、「タイム・アフター・タイム」のように、ポプュラーミュージックでは調性音楽と絡み合って、ちょっと聴いただけでは気付かない形で、この技法は使われたりします。

つまり、我々メタラーの音楽も、6弦開放弦を使ったEmのリフは、コード進行しないEフリジアンっぽいモード技法って解釈もできる訳ですね。
ガチのジャズモードだと、1小節単位でモードチェンジする音楽もあり、やがて2コードから1コードになり、どんどん「モーダル・インターチェンジ」していく!!って進化を辿っていきます。
👆ちなみにモード好きのマイルスは、晩年に「タイム・アフター・タイム」をカバーしております。
教科書だと、ただの7つスケールってだけで終わっちゃうチャーチモードですが、実際にダイアトニックコードの中に取り入れて、2コードで弾くと、各モードサウンドの全体像がよく分かる様になるので、各モードで2コードを作って味わうって練習をしていきましょう。

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